さらば、V10 =時代の節目によせて=

ひょっとしたら、今年はF1の一つの区切りの年となるのかもしれませんね。


あるライターが、「F1を大きく時代別けするとすれ、セナ以前とセナ時代とセナ以降と別ける事が出来る」と言いました。
そして、セナ以降でも去年まではシューマッハ期間と言えるでしょう…ベネトン時代からですと、ちょうどセナが没した時代。そして、今年、33年振りに最年少チャンピオンが生まれました。ただ、これでシューマッハ時代が本当に終わったのかどうかの答えは、まだ来年を待たなければ判明しませんね。


そして、今年でジョーダンの名が消え、ザウバーミナルディ・BARも来期には名前がどうなっているのか不明の状況だが、これにより純粋なプライベータ・チームと呼べるのがミッドランドだけになってしまった(BMWと切れたウィリアムズもプライベータと呼べるかもしれないがチーム規模からみると…一緒に出来ない気がする)。


そして、ハッキリとした節目がもう一つあります。それは、V10時代の終わりと言う事です。

エンジン的な見地でF1の時代を別ければ、DFV時代・ターボ時代・V10時代ですね。
この内のターボとV10の幕開けは両方ともルノーがもたらした物でした。


もっともV10は当初はホンダが強力でした。ただ、ホンダはV10時代を作ったとは思えないんです。というのは、ルノーとホンダがターボ禁止のおりV10を選択した理由が違うからです。


両者とも12気筒の様なマルチシリンダーで高回転・高出力を目指したいが、V8のようなコンパクトエンジンがハンドリングに良い。と言う事で妥協の産物として中間のV10を選択したのです。…が、ここで両社の妥協という言葉にはまったくの違いがありました。

ホンダ:あくまでもF1で最高のエンジンはV12、V10並のサイズ・重量のV12を目指す。V10という妥協はコンパクトなV12を作成できるNAエンジンの技術が蓄積されるまでの妥協

ルノー:V10という妥協したエンジンこそがF1で最良の選択

と言う物でした。ホンダのV10は本当に妥協でルノーV10にはディストネーションがあったのです。ルノーのV10にはルノーのターボと同じように信念の元に作られたと言える物でしょう。


さて、このように書いているとホンダのほうが駄目のように思われますが…。実際はホンダのV10は他のエンジンを圧倒しました。そして、ホンダはV10でここまで強いのなら次のステップへ、と言う事でV12へ移行します。


さて、ホンダのV12とルノーのV10では、どちらが優れていたのでしょう…結果的にはルノーV10はFW14Bとマンセルという組み合わせでホンダ+セナを負かしました。

しかし、これはFW14Bが当時最強シャシーだった事、ホンダはすでにF1からの撤退を決めていた状態で未熟性のホンダV12と、すでに熟成され始めたルノーのV10だったと言う事で、も少しホンダが続けていなければハッキリとは分からなかった…のですが…


F1でフェラーリと言えば12気筒とイメージされるほどのフェラーリが、とうとうV10へスイッチ(しかも…当時フェラーリV12のヘッド周りにはホンダからの技術提供があった。これはホンダのF1撤退後に、フェラーリからホンダのF1エンジン関連の施設の見学を求められ、その時から期間・内容は分からないがホンダが技術提供を多少なりとも行っていた。これには、やがて第3期としてホンダがF1フィールドに戻る際に技術的な浦島太郎にならずに済むというホンダサイドにもメリットがあった為と私は推測しています)

さらにホンダV10をベースに継続参戦していた無限がジョーダンでチャンピオン争いに喰い込む活躍をするなど状況的に時代の趨勢はV10になっていたんですね。


そして、結果的にレギュレーションでV10までと規制される前にF1全車がV10になったというのは、ある意味でルノーの勝利と言うのは言いすぎでしょうか?

ちなみに、V10規制はホンダの復帰、トヨタの参戦でこの2社がまたとんでもないV12でも開発したら、ただでさえコスト高のF1に更にエンジン開発競争の費用が高沸する事を恐れたFIAが先手を打っての事でした。実際トヨタはV12で計画を進めていたのでV10規制によって参戦計画をずらさざるを得なくなりました。


今回、何が感慨深かったかというとV10最後の年にV10のパイオニアだったルノーがフルコンストラクターとしてドライバーズ・チャンピオンを獲得したって事なんです。できれば、マクラーレンは強力だけど、コンストラクターも獲ってV10有終の美を飾って欲しいなぁ


あっ、ターボの事は私の本館でもちらほら書いてると思うし、長くなるからパスねっ


ルノーのデニ・シェブリエのコメント

「中国GPのグリッドに立ったとき、あるいはV10が最後にフィニッシュラインを横切る音を聞いたときに、私たちはきっとある種特別な感情を覚えるだろう。それはひとつの時代の終わりだからね。V8のサウンドはまったく別のものだ。つまり、私たちがエンジンに火を入れて、ガレージの中でエンジンの音を聞くという日常的なルーティンも、かなり違ったものになる。私たちルノーのスタッフは、17シーズンにもわたってV10エンジンの音を聞いてきた。それが来年からは違うものになるんだ……」

「私たちはV10のパイオニアであり、V10が標準規格になるまではライバルのV8やV12と戦ってきた。まもなく新しい時代が訪れようとしている。F1にV10というエンジンレイアウトを持ち込んだこと、そしてV10最後のシーズンに選手権を勝ち取ったことは、いわばF1の歴史におけるひとつの時代の始まりと終わりを明確に示した“ブックエンド”のようなものだろうね」

[オートスポーツWEB 2005年10月12日]より