ペンシル最後の年

現在のF1マシンのデザインはフェラーリロリー・バーンマクラーレンのエードリアン・ニューウェイの二人がトップと言われる事に異論がある人は少ないでしょう。実は、この二人には面白い共通点があるんです。

まず、この二人に他のデザイナーの事を聞くと、必ず最後に「今のF1界で空力を理解しているのは彼しかいない」とお互いの事を言うんですよね。

それと「CADを使わない」って事。二人ともマシンの設計時は昔ながらの紙にペンシルで製図をしているんです。なんでも、コンピュータの画面では縮小した全体か、実物大の一部分しか見れないために、イメージおよびインスピレーションが湧かないそうです。また、目がちかちかして頭が混乱するらしいのでCADは使わないんだそうです。もちろん、各部は個別で別のスタッフがCADで設計していたり、二人の書いた図面は誰かがCADデータに変換しているのですが、彼ら二人は自ら設計のためにキーボードを叩く事はないそうです。

もう一つの共通点は「もう、辞めたい…」って所かな???
ただ、同じ辞めたいでも、ちょっと違うのは、
バーン:
 F1に限らずエンジニアリングから足を洗ってダイビング・スクールを運営しながら、冬はスキー、夏はダイビングを楽しみながらノンビリ過ごしたい。

ニューウェイ:
 とりあえずF1を辞めたい…その後はヨットか何かの設計にチャレンジしたい。

また、バーンは「デザイナーの引退=フェラーリが最後」と決めていて、チームも次の契約更新時(たしか2006年末だったかな)にバーンが更新を望まない限りは慰留しない方針らしいく(すでに何年も強引に慰留してきたから)。バーンもフェラーリ内で自分の後身を育て、今年からメインのデザインは後輩にさせて、自分はオブザーバー的に全体を管理すると言う風にフェラーリにとって自分がいなくなる事がそのままマイナス要因にならないようにしています。

しかし、ニューウェイはジャガー移籍騒動や最近でもウィリアムズ復帰の噂等があり、必ずしもF1引退という訳ではなく、何か環境を変えてリフレッシュしたいと言うのが本音のようです。その為、「ニューウェイの移籍=他チームの戦力アップ」を恐れるマクラーレンは彼の慰留に必死。もし彼のモチベーションが完全に失われた場合には年単位での休暇もとの噂もあります。そういえば、F1界でよく言われる「ガーデニング休暇」ってニューウェイがウィリアムズからマクラーレンに移籍する際に、移籍ぎりぎりまで働かせるとチームの最新技術がニューウェイの頭に入ってマクラーレンに行くために半年ほど休暇をあたえ、休暇中のニューウェイは自宅の庭でバラ弄りをしてたのがきっかけだったような…

この二人が設計の第一線から離れると、もう完全にCADによる設計ばかりになるんです。時代の趨勢ですが…実は私、昔製図関係の仕事をしていた事もあるので、ちょっと寂しいんですよね。