FTT&FCP

元々はFTT(フロント・トルク・トランスファー)と言う名前で、電子制御されていたのですが、FIAからの注意で電子制御をはずし、名前もFCP(フロント・クラッチ・パック)と改名されました。

何の為の物かと言うと…

1.フロントのブレーキ時のアンチロック

 普通の車でも急なコーナーリングをすると、車体のコーナーのイン側って持ち上がって、アウト側が沈み込みますよね。俗に言うロールって状態です。
 この時に、フロントタイヤは地面から離れなくても、車体のロール分タイヤが浮き気味になり、その分タイヤの接地面積が減ります。この時に急ブレーキをかけると、イン側のタイヤは接地面積が少ない為にロックしやすくなります。
 しかし、アウト側のタイヤはグリップしてる分ロックし辛いはずです。そこで、アウト側のタイヤと同じ回転をイン側のタイヤに与えてやればイン側もロックしづらくなります。
 その為に、右と左のタイヤをシャフトで繋ぎ、真中にデフをつけてアウト側の回転をイン側に伝えるようにしました。
 タイヤがロックすると、フラットスポットが出来たり、ロックしている間はコントロール性が悪化したりなので、有効なんですね。

2.ロールの防止(ただ、これは私の考えすぎかもしれません…)

 前述のとおり、車はコーナリング時にロールします。ロールでイン側が浮くと、イン側のタイヤはそれだけ仕事をしなくなります。ロールが無ければ、コーナリング中でもタイヤが4本とも仕事をしてくれます。さらに、ロールが少なければ、タイヤの接地面の変化も少ないので磨耗などにも良い影響がありますね。
 そこで、車がロールしそうになった時にイン側のタイヤにかかるトルクを増やして回転力をましてやるとそのタイヤ側の車体が沈もうとします。これでロールを減らしてやる為にアウト側のグリップでタイヤが回っている力をイン側に伝えてイン側のタイヤに回転力を与えるって事です。
 これは、フェラーリが以前にリヤデフでやっていた「ヨールコントロール」と同じ考え方だと思います。


 さて、まずFTTは、1戦のみで禁止になりました。これは、アウト側のトルクをイン側にどの位伝えるか調節を電子制御で油圧でコントロールしていたからです。現在のF1では以下の物は禁止されています。

1.電子制御デファレンシャル
2.操舵輪の電子制御

 1に関して、FTTは左右のトルクを調節するから一種のデファレンシャル装置と考えられるので、それを電子制御しているのは禁止

 2に関して、元々電子制御によるバリアブル・パワーステアリング等を禁止する為のものですが、操舵輪=フロント・タイヤなので、それを電子制御しているから禁止

これを理由に他チームも禁止を訴えていたようです。

そこで、BARは電子制御を取りやめたバージョンを作成し搭載しました。
たしかに電子制御をなくした事での細かいコントロールは失っても、効果はあったようです。

しかし…残念ながら、FCPも来年は駄目なようです…

私の邪推ですが、もしBARが強行にFCPを搭載した場合は他チームのクレームは、きっとこうなると思います。

1.レギュレーションでABS(アンチ・ロック・ブレーキ・システム)は禁止されている。FTPはイン側のタイヤのロックを防ぐのが目的だからABSと考えられるから違反

→これは、この通りかもしれない…

2.レギュレーションでF1は駆動輪2本、操舵輪2本と決まっている。だからFCPは違反

→なぜならエンジン出力で直接駆動しているのはリヤの2本ですが、イン側のフロントタイヤはアウト側のフロントタイヤによって駆動力を与えられていると考えられるからです。

もっとも、FIAが認めれば、有力チームは瞬く間に同じ物を搭載するから、結局はそれまでの1〜3レース分くらいしかアドバンテージは得られないでしょうね…。

ちなみに、虚ろな記憶ですが、たしか99年前後にベネトンが同じような機能を開発していて実戦投入は見送られた事があったと思います。どうして没になったかまでは記憶していないのですが、多分BARほど効率の良い物が出来なかったのか、今ほどエンジン出力が高くなかったからFCPでおきる機械的な摩擦や抵抗などの損失がもったいなかったからかって感じかなと推測しています。

そーいえば、ミニカーでFTT、FCP搭載モデルを模型化するとフロントタイヤにシャフトが付きますね…。私のミニカー入門の記事でONYXのミニカーについて、「フロントタイヤにシャフトがとおっていておもちゃっぽい」って書いてたな〜