F2ってどうしたの?

以前、メールできた物のFAQ化用の原稿です。

F1,F3000,F3…昔はF1,F2,F3で、その方が自然ですよね。以前はF2があったと聞いたのですが、なぜ今はF3000なんでしょう?

まず、F1,F2,F3時代のレギュレーションですが、それぞれにマシンの寸法、タイヤのサイズ等々の違いがありますが、一番の違いはエンジンだと思います。

F3  量産車用ベースの2,000cc
F2  レース用に開発された2,000cc
F1  レース用に開発された3,000cc

これだと、なんかいい感じのステップアップって印象ですよね。実際にはF3は2,000ccの直列4気筒、F2は2,000ccの直列4かV型6気筒、F1は3,000ccでV型8かV型12気筒が使われてきました。

では、F2からF3000に変更された経緯ですが、そのためにはF1のターボ化が大きな影響を及ぼしています。

まず、F1にターボが参戦したのは"FAQ"の「ターボエンジン禁止の過程」にも書いているのですが
ル・マンの次の挑戦としてF1を選び、77年途中から自分の得意なターボエンジンで参戦してきました。しかし、案の定、マシンは壊れまくれたので、他のチームは当然ターボに対して冷ややかな反応を示していました。

 それでも、ルノーはあきらめずターボを続け、79年に初優勝、80年には3度の優勝をするようになり他チームもターボを無視することが出来なくなりました。」

そして、84年だったかな…とうとうF1は全車がターボエンジンとなりました。

 F1はそれまで、フェラーリなどの一部の12気筒以外はほとんどがフォードDFVのエンジンだったのが、ターボを機にBMW、TAG(ポルシェ)、ホンダそれにルノーフェラーリ、フォードと参加する自動車メーカーがしのぎを削る開発競争を繰り広げ、とうとう予選は1500馬力、決勝で1000馬力前後というレベルにまで到達します。
そこで、FIAは強力なターボエンジンに危惧を抱き、いろいろな制約を課すのですが、次々にクリヤーされるので、とうとうターボの禁止を決めます。
 そこで、急にターボ禁止にすると、F1のスピードダウンが極端すぎる事になることを避けるために、F1のエンジンレギュレーションを3,000ccから3,500ccに変更しました。(ここら辺は「ターボエンジン禁止の過程」を参照してください)

 このあたりで、今までのF3,F2,F1のピラミッド構造のままだとF2とF1のマシンの性能差が大きすぎるので、F2のレギュレーションを変更しようと思います。特にエンジンをそれまでのレース用2,000ccをレース用3,000ccの8気筒に変更する事を決めました。ただし、3,000ccレース用と言っても市販されるレース用エンジンに限ると制限し、ごく一部の試験参加を除けば1チーム独占等のスペシャルエンジンは使用できないようにし、シリーズによってはワンメイクにした事でエンジンによる不公平をなくしています。

ただし、ここで問題はF2はヨーロッパでもヨーロッパF2選手権の他にも数ヶ国で、また日本でも開催されていました。それまでF2をやっていた全ての国が一気にレギュレーション変更する訳にも行かきません(なぜなら、各国で参加しているチームが全て、マシンを変えなければなりませんから、費用や資材の量的にも一度に全世界でって訳には行かなかった)。
 そこで、同一クラスでレギュレーションが二重化されることを防ぐために、今まで通りのF2と、F2に変わるクラスをF3000と呼称を変えて区別しました。そして、F2を開催している国も順にF3000に移行することにします。また、FISAのなかでは「F3は若手のレースだからそのままで問題ないが、F2はどうしてもF1の格下というイメージが強いので別の名前を付けたい」って理由もあったと聞きました。

 そしてヨーロッパでは国際F3000(それまでのヨーロッパF2選手権)が85年から始まり、日本でも87年から始まります。他のローカルのF2も前後して順次F3000に変わっていきます。

 現在、F2は自然消滅してF3000になりました。そのため、F3000をF2にもう変更しようという動きもちょくちょく出るのですが、「F3000という名前が浸透・定着している」「F2は過去の物のイメージ」があるという理由で見送られているうちに、どうもヨーロッパの誰かが「F2」を商標登録してしまい自由に使えなくなってしまったらしいです…(その為に、現在FIAF3000に変わるクラスを「GP2」としているんです。また、このときにバーニーはF2の轍を踏まぬようにGPX(ぺけの部分は一桁の数字)を商標登録したらしいですが、どうも2輪のレースでの呼称でGP1とか使われていてもめたそうですが…)

 さて、F3000が適用される理由には、他にもバックボーンがあります。それは、急にレギュレーションを変える際に、3,000ccのエンジンが沢山必要になるって問題です。じつは、これも一つの理由だったのですが…レース用の3,000ccでV8のエンジンといえば…皆さんもフォード・コスワースDFVが浮かびませんか?

 ターボ化する前は多くのチームが使っていたエンジンです。F1では全車がターボ化されたことでDFVエンジンはいっぱい余っていたんです。これを使用できればF3000用のエンジンもとりあえず間に合います。さらには・・・。F1ではこれだけ多く使われたエンジンですから、全チーム分のエンジンをコスワースでメンテ仕切れず、エンジンのメンテ・チューニングを専門とする会社が発生し、その会社が各F1チームと契約してメンテ等を行っていたんです。これらの会社もF1エンジンのターボ化=ワークス化で仕事が無くなるところだったのですが、F3000でDFVが使われる事で仕事が発生し廃業から救われたって言う事も重要な課題になっていました。(F1用のエンジンを自社開発して供給したハート、ジャッド等も元々この手のメンテ会社のステップアップしていった姿です。残念ながら、やはりワークスに太刀打ちできずに…)

 その後、F1は排気量を3,000ccに戻しましたが、技術と資金を湯水のように使ったF1用V10エンジンと一応市販のV8エンジンでは全然別物なのは言うまでも無いことかな?。

 F2の頃もそうでしたがF3000でも、本来F3→F3000→F1とステップアップしていくのが本来なのですが…。どうも、F3→F1でF1に行けない人がF3000ってイメージがあるのでしょうか。スター性・将来性のあるドライバーF3からF1に行ってしまうんで、F3000のチャンピオンを獲るよりイギリスF3のチャンピオンの方がF1に行きやすく、良いシートも得やすいというのが実状ですね(セナ、ハッキネン、琢磨等々がイギリスF3チャンピオン)。逆にF3以外からだと、ウェバーやモントヤーのように他のレースやアメリカからのレーサーの方がF3000経由より来やすいとか、アーバインやラルフ、ハインツがデビューした頃はヨーロッパより日本のF3000(現F・ニッポン)の方がF1に近かった等、ヨーロッパF3000は中途半端なクラスと思われがちなのが悲しい現実です。